「らんびき」の熟成にはさまざまな種類の樫樽を使用しています。アメリカ産のホワイトオークで造られた新樽や一度スペインでシェリー酒の熟成に長期間使用された古樽。フランスのリームザンオークやトロンセオークで造られコニャックの熟成に使われた古樽やラム酒の古樽などです。オークとはブナ科の落葉樹の総称ですが、数百種類があり北半球に広く分布しています。品種や原産地によって性質が異なり、そのことが樽1本、1本の持ち味となって貯蔵される酒質にも大きく影響しています。樽になる材木は樹齢100~200年のもので、中には300年を超えるものもあります。一般的に樹齢が長くなるほどに目が細かく詰まり、ゆっくりとした良質の熟成効果が得られるとされています。
長期間焼酎の熟成に使用していくうちに年々熟成効果は穏やかになっていきます。古樽は20年以上使用すると効果もずいぶん弱まってきますが、当蔵では40年以上頑張っている樽もあります。また新樽は一定期間使用した後に内部を削り、再生処理を施すことによって息を吹き返し、更に長い年月焼酎の熟成を続けることができます。
再生の困難な古樽など、貯蔵容器としての役割を終えた樽は、家具職人の手によって新しく生まれ変わります。
当蔵の樽は、工房薫風舎の阿部民平氏によって椅子や時計へと姿を変え、長く愛用されています。
「樽材としては役目を終えた木材ですが、表面を削るととても綺麗なんです。もともと乾燥などの処理もしっかりしてあるので変形しにくく丈夫で重厚感があり、家具の材料としてとても良いんですよ。また柾目(まさめ)板なので、表面に現れる木目が虎斑(とらふ)と呼ばれる虎のような美しい紋様になるのも魅力です。ところどころ焼酎がにじんでいるのも独特で、味わい深いですね」
※椅子や小物は販売いたしておりますが、廃樽の発生が不定期な為、生産量にも限りがございます。ご興味のある方は弊社もしくは工房薫風舎までお問合せください。
福岡県古賀市小山田313
電話:092-944-3609
阿部民平氏 略歴
1950 京都市に生れる
1989 長野県上松技専校木工科修了
1990 福岡県朝倉郡杷木町(現朝倉市)薫風舎開設
1995 警固神社 第1回個展
1996 中央銀行 二人展
1997 現在地に移転
1997 中央銀行三人展
2000 警固神社 第2回個展
2006 ギャラリーエヴァンターユ 第3回個展
その他グループ展に出展
熟成効果が弱くなった樽や修理が必要になった樽は、再生処理を施すために樽工場に運ばれ、熟練の職人さんの手によって部材の交換や焼き直しが行われます。焼き直しとは、樽の内部で火を焚いて焦げ目をつける工程で、チャ―やトーストと呼ばれています。この焦げ目の付け方にも強弱があり、それによっても熟成される焼酎の風味は大きく影響されます。
当蔵で30年間貯蔵に活躍後、樽工場にて再生され当蔵に帰還した樽。新樽の時とはまた一味違った熟成効果をもたらしてくれることでしょう。